相続税・贈与税改正その2 (平成15年税制改正より)
 

今回は平成15年度税制改正で注目されている相続時精算課税制度について解説いたします。今年導入された相続時精算課税制度は贈与税と相続税を一体化し、相続時に税金を精算する制度です。この新たな制度は従来型の贈与との選択制になっておりますが、従来型の贈与とはどのような違いがあるのでしょうか。また、どのように活用すればよいのでしょうか。

1.相続時精算課税制度の適用要件
2.相続時精算課税制度の計算例
3.相続時精算課税制度選択上の注意点

◆1.相続時精算課税制度の適用要件
相続時精算課税制度の一つの特徴として比較的少ない税率で大型の贈与が可能となったことがあげられます。これまで贈与税は、相続税の補完税と呼ばれ、贈与により意図的に相続財産を移転して相続税を減らすことを防ぐために、贈与税の税率は非常に高く設定されていました。これによりなかなか大型の贈与ができませんでした。
わが国における個人金融資産は、約1400兆円あると言われていますが、そのほとんどを高齢者が保有しており、消費活動の中心となる勤労世代は、あまりお金がないという状況です。そこで、経済活性化のためにも勤労世代(消費世代)に対する大型の財産移転を促し、その妨げとなっていた贈与税を緩和しようという目的で「相続時精算課税制度」が創設されました。したがってこの制度を選択する場合は従来型の贈与とは異なり、贈与するものされるものに一定の要件が付されております。

<条件> 贈与者 65歳以上の親  受贈者 20歳以上 将来の相続人となる子供(代襲相続人である孫等を含む)
贈与者ごとに選択できるが、一度選択すると途中でやめることはできない
<贈与税の計算> 非課税枠 2,500万円を控除した後、一律20%の税率で贈与税の計算をする
<相続税の計算> 贈与者の相続発生時には、それまでの贈与財産と相続財産を合算して相続税の計算をし、既に支払った贈与税を控除する
(住宅取得資金の贈与に関しては、非課税枠は3,500万円で、贈与者の年齢制限なし。但し、平成17年12月31日までの贈与に限る)

●従来型の贈与との比較(選択制)

  従来型の贈与
(暦年課税)
相続時精算課税
税金計算
税金納付 年度ごと 相続時に精算
贈与対象者 制限なし 65歳以上の親から
20歳以上の子供に対する贈与
相続時の取扱 原則、相続財産とは切り離される
*相続開始前3年以内は相続財産に加算される
贈与時の価格で相続財産に加算される

*贈与税の税率と控除額

基礎控除後の金額 税率(%)
控除額(万円)
200万円以下 10 -
300万円以下 15

10

400万円以下 20 25
600万円以下 30 65
1,000万円以下 40 125
1,000万円超 50 225

◆2.相続時精算課税制度の計算例
相続時精算課税制度は大型の贈与が可能となる代わりに、相続時に贈与済み財産を一旦もち戻し、相続税を算出し、贈与時に納付済みの贈与税と精算します。具体的な計算方法は以下のとおりです。

●ケーススタディ

<前提条件>
1. 相続人は配偶者と子供一人
2. 子供は被相続人から、生前に2回、それぞれ現金1,500万円と2,500万円の贈与を受け、
相続時精算課税制度を選択
3. 相続時には、6,000万円の相続財産(債務控除後)が残っていた
4. 子供は既に4,000万円の贈与をうけていたため、今回の相続財産の6,000万円のうち
1,000万円の財産を取得


◆3.相続時精算課税制度選択上の注意点
相続時精算課税制度を選択する場合は以下の点に留意しなければなりません。

【前提条件】
・父母はともに65歳以上であり、贈与者
・兄妹はともに20歳以上であり、受贈者
 であるものとする
<例>


1.手続き 相続時精算課税制度を選択しようとする贈与があった年の翌年の2月1日〜3月15日までに、所轄税務署長に、『贈与税の申告書』と『選択の届出書』を提出する。
一度選択したら撤回はできないため、相続時まで相続時精算課税制度が適用される。
2.適用対象財産 種類、金額、贈与回数は問われない。
「現金」、「土地・建物」、「未上場株式」等なんでもOK。
3.選択者 相続時精算課税制度を選択するか、既存の贈与税の制度を利用するかは、受贈者ごとに選択する。
上の例では兄、妹がそれぞれ選択可能。贈与者である父・母に選択権はない。
4.選択単位
父、母を区別して選択できる。たとえば、下記のようなことも可能となる。
・兄は、父については相続時精算課税制度を選択、母については既存の制度。
・妹は、父についても母についても既存の制度を選択。
5.適用者以外からの贈与 適用者以外からの贈与については既存の贈与税の制度が適用される。
例えば、父について相続時精算課税制度を選択した場合であっても、父以外の人からの贈与については年間110万円の基礎控除の適用がある。

以上のように相続時精算課税制度の適用を受ける場合、従来型の贈与にくらべてさまざまな要件を充たさなければなりません。