将来の財産管理、誰にお願いしますか?(任意後見制度とは)
 

わが国では少子高齢化が深刻な問題となっています。少子高齢化が進行する中で、これから高齢者による財産管理能力がひとつの問題になってきます。
痴呆症や知的障害のある方、精神障害のある方など、判断能力の不十分な方々は、財産管理や身上監護についての契約などの法律行為を自分で行うことが困難であったり、悪徳商法などの被害にあう恐れがあります。このような判断能力が不十分な方々を保護し、支援することを目的として2000年に成年後見制度が改正され、新たに「任意後見制度」が創設されました。果たして、任意後見制度により高齢者の円滑な財産管理が図れるのでしょうか?

1.成年後見制度が改正された背景
2.任意後見制度の新設
3.任意後見制度の今後


◆1.成年後見制度が改正された背景
成年後見制度とは、痴呆症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分になった人の社会生活を法的な側面から支援する仕組みです。成年後見制度が改正される以前は「禁治産」「準禁治産制度」というものがありましたが、この制度は100年も前に作られたもので、多くの問題があり、利用しにくい制度であると言われていました。改正の大きな趣旨は、高齢者など判断能力が衰えてきた人の能力を最大限に生かし、本人を尊重して、不足している部分を保護、支援しようというものです。

●これまでの成年後見制度の問題点と改正点1
  <改正前>
保護の対象者がある程度重い精神上の障害のある方のみに限定され、軽度の痴呆、知的障害に対応できなかった。
 
  <改正後>
後見」「保佐」に加え、新たに「補助」の制度を創設し、軽度な障害者も本人の同意のもとで家庭裁判所が選任する「補助人」の支援を受けることが可能になった。

●これまでの成年後見制度の問題点と改正点2
  <改正前>
禁治産および準禁治産の宣告を受けると戸籍に記載されるため、関係者が制度の利用に抵抗を感じた。
 
  <改正後>
戸籍の記載を廃止し、新たに法務局による登記制度を設けた。(成年後見登記制度)

●これまでの成年後見制度の問題点と改正点3
  <改正前>
保護者である後見人、保佐人を一人しか置けないことなどから、必ずしも適任者による十分な保護や支援をうけられない可能性があった。
 
  <改正後>
事案に応じて、家庭裁判所が保護者を複数人選任することや法人を選任することが可能となった。また、保護者を監督する成年後見監督人が選任される場合がある。

●これまでの成年後見制度の問題点と改正点4
  <改正前>
夫婦の場合、配偶者が必ず後見人保佐人になるものとされているが、夫婦ともに高齢者となり、後見人の役割が十分に果たせない可能性があった。
 
  <改正後>
事案に応じて、家庭裁判所が保護者を複数人選任することや法人を選任することが可能となった。また、保護者を監督する成年後見監督人が選任される場合がある。

◆2.任意後見制度の新設
新しい成年後見制度では、より本人の意思を尊重するために「任意後見制度」を創設しました。任意後見制度とは、将来、老化や精神上の障害により判断能力が不十分になったときに備え、本人の判断能力があるうちに、あらかじめ、自分の指定した人(後見人)を定め、将来、老化や精神上の障害により判断能力が不十分になった時に、自分があらかじめ定めた後見人に財産の管理や法律行為を委任することが可能な制度です。



●任意後見契約の要件
公正証書による契約であること
自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部、または一部について代理権を付与する委任契約であること
任意後見監督人が選任されたときから契約の効力が発生する旨の定めがあること

●任意後見制度の流れ
任意後見契約の締結(任意後見の登記)


判断能力の不十分な状況

任意後見監督人の選任申立て


本人・配偶者・四親等内の親族
任意後見受任者

任意後見監督人の選任(家庭裁判所)
 
任意後見監督人による監督開始
任意後見人の代理権の効力発生
   
 
任意後見監督人は弁護士、司法書士などの法律専門家や福祉の専門家などが想定されます。また、本人の配偶者、直系血族、および兄弟姉妹は任意後見監督人にはなれません。

◆3.任意後見制度の今後
このように新しい成年後見制度は、本人の意思とプライバシーを尊重し、従来の制度より使い勝手のよいものとなっています。特に任意後見制度はあらかじめ「後見人」を定められるという観点で、注目すべき制度です。
元気なうちにどのような人を後見人にするか、というのは非常に難しい問題です。また、自分が選んだ人が「後見人」を引き受けてくれるかという問題もあります。いずれにしましても家族はもちろん、家族以外でも自分の財産管理や契約行為などを依頼できるような信頼のおけるパートナーを築くことが重要です。