老朽化したマンションは、どうなるの?
(マンションの建替えの円滑化等に関する法律とは)
 

地価の下落や、低金利、住宅取得促進税制等に後押しされ、大量の分譲マンションが供給されています。国土交通省の推計によると、これまでに分譲された総戸数は平成12年末の時点で約385万戸にのぼるとされています。更に平成12年の時点で築年数が30年を超えるものが12万戸あり、平成22年には約93万戸に達すると推測されており、マンションの老朽化が今後大きな社会問題となることが予想されています。
 住宅の所有形態の一つとして定着している分譲マンションですが、老朽化に伴うマンションの建替えはこの法律によりスムーズにいくのでしょうか?

1.この法律ができた背景
2.マンションのストックの現状と建替えの状況
3.マンションの建替えの円滑化等に関する法律の概要


◆1.この法律ができた背景
今後増加するであろう老朽化マンションの問題を解決していくために、平成13年に「マンション管理の適正化の推進に関する法律」が施行されました。しかし、これは今後のマンション管理、運営のあり方を示すこととそれに伴いマンションに関する専門家を国が認定しようというもので、今後問題となるであろう、マンションの大規模修繕や建替えを直接後押しするものではありませんでした。そこで、マンションの建替えを円滑にすすめるため、“マンションの建替えの円滑化等に関する法律”が施行されました。
 平成7年の阪神・淡路大震災では、多くのマンションが倒壊し、建替えが実施されたマンションがある一方、建替えの決議をめぐり裁判に発展しているケースもあります。

◆2.マンションのストックの現状と建替えの状況
●マンションストックの建築時期







<区分所有者1人あたりの金銭負担額について>
  地区数 割合
金銭負担なし 1 1.5%
500万円未満 0 0.0%
500万円以上1,000万円未満 4 6.1%
1,000万円以上1,500万円未満 20 30.3%
1,500万円以上2,000万円未満 32 48.5%
2,000万円以上2,500万円未満 5 7.6%
2,500万円以上3,000万円未満 2 3.0%
3,000万円以上 2 3.0%
合計 66 100.0%
不明:8地区

<参考>老朽マンションの事例

・老朽マンションの建替え事例では、金銭負担なしで従前と同等以上の専有面積が
 取得できるものが大部分。(88%)
・全額金銭負担となった事例
  事例1 約2,000万円 (東京)
  事例2 約1,500万円 (名古屋)

上記のデータからわかるように、これからマンションは、新築市場と建替え市場の2つを考えていかなければならない状況にあります。マンションの建替えについては区分所有法により、区分所有者または議決権の4/5以上の多数の同意が必要とされているので、円滑な建替えが可能な法制度が必要不可欠なのです。


◆3.マンションの建替えの円滑化等に関する法律の概要
1)マンション建替え事業主体
  ・マンション建替組合の設立
  建物区分所有法に基づく建替え決議がされた場合、建替えに合意した区分所有者が法人格を有するマンション建替組合を設立できるものとする
  ・運営・意思決定ルールの明確化
  マンション建替組合の運営・意思決定のルールを法律により明確化し、合意形成や事業実施の円滑化を図る
  ・民間事業者等の能力の活用
  民間事業者等が組合員として参加できるものとすることにより、民間事業者等のノウハウ、資金力等を活用できるようにする

2)マンション建替事業のしくみ
  ・権利変換手法による関係権利の円滑な移行
  マンション建替組合が定めた権利変換計画に従い、区分所有権、抵当権等の権利関係が再建されたマンションに円滑に移行できるようにする
  ・マンション建替組合による権利の買取り
  建替えに参加しない者等からマンション建替組合が区分所有権等を買取りを行うことができるものとする
  ・登記の一括処理
  建替えに伴い必要となる登記を一括して申請できる不動産登記法の特例措置を講じる
  ・公的関与による事業の適正な実施の確保
  地方公共団体による技術的援助や監督により事業の適正な実施を確保
  ※現行の区分所有法に基づくマンション管理組合や建替えを行う団体は、その設立に認可等を要しない一方、公的監督等の対象となっていない

3)その他
  ・建替えに参加しない者に対する居住の安定のための措置
  高齢者など建替えに参加する事が困難な者に対して、公共賃貸住宅への優先入居などの居住安定のための措置を講じる
  ・防災や居住環境面で著しい問題のあるマンションの建替えを促進
  防災や居住環境面で著しい問題のあるマンションについて、市町村長が建替えを勧告できるものとする
  ※勧告が行われたマンションの建替えについては、公共賃貸住宅の家賃減額や移転料に対する補助など借家人等に関する居住安定のための措置を講じるとともに、借家契約の更新等に関する借地借家法の特例を規定
  ・施行期日
  平成14年12月18日施行

●マンションの建替えの流れ

区分所有法による建替え決議    
・事業計画、定款の作成
・行政庁への認可
マンション建替組合の設立    
・組合による建替え不参加者からの権利の買取り
権利変換計画の作成
   
・組合による計画不同意者からの権利の買取り
・行政庁への認可
権利変換
   
・高齢者等の居住安定のための措置
建替え工事の実施    
・組合による登記の一括申請
再建建物への入居    

●マンション建替え事業に対する支援措置

(1)補助
  優良建築物等整備事業(マンション建替タイプ)
調査設計計画費、土地整備費、共同施設整備費等に対する補助
都市再生住宅制度(従前居住者対策)
従前の居住者用宅地として民間賃貸住宅を借り上げる場合の家賃対策等に対する補助
(2)融資
  住宅金融公庫融資(都市居住再生融資)
調査設計費、除去費、土地費、建設費等に対する融資(死亡時一括償還制度利用可)
(3)債務保証
  組合再開発促進基金による債務保証制度
市街地再開発事業等の事業資金の借入れに対する債務保証
(4)税制
  権利の変換や転出に伴う権利の譲渡等に係る所得課税流通課税等の特例措置

■税金の特例

<マンション建替え事業に係る特例措置の創設>
  マンションの建替えの円滑化等に関する法律の制定によりマンション建替え事業が施行されること
  に伴い、所得税法人税登録免許税について以下のような措置が講じられています。

◆所得税・法人税
  ・建替事業に伴う権利変換により再建されるマンションの権利を取得したとき
⇒従前の資産の譲渡がなかったものとみなす
   
・やむを得ない事情により土地等に係る権利変換よる保証金を取得するとき
⇒1,500万円の特別控除の特例

・建替事業の施工者に対するその事業の用に供する一定の土地等の譲渡
⇒優良住宅地等の造成のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の適用
◆登録免許税
 
  <本則>   <特例>

・権利変換手続き開始の登記

1,000分の4
非課税
・マンション建替組合が取得する旧マンションの所有権の取得の登記 1,000分の50
・マンションの敷地に係る登記(清算金等に対応する部分等を除く) 1,000分の50等
・再建されるマンションの建物に係る登記(清算金等に対等する部分等を除く)
1,000分の6等