「定期借家制度」とは?(定期借家でこう変わる)
 

定期借家は、「貸主と借主が対等な立場で契約期間や家賃等を決め、合意の上で契約が行われる自由な賃貸借契約制度」です。現在行われている正当事由による解約制限のある賃貸借契約とは異なり、契約期間が満了すると、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する新しい賃貸借契約制度です。
英米では、定期借家契約が一般的ですので、我が国の借家市場も国際標準(グローバル・スタンダード)に対応した時代が到来することとなります。

1.定期借家契約の主な特徴と契約上の留意点
2.従来の借家契約の問題点
3.定期借家の活用法と影響
4.定期借家権と普通借家権の比較

◆1.定期借家契約の主な特徴と契約上の留意点

1) 定期借家契約は、契約の更新がなく、期間満了により終了する旨等を明記した書面(定期建物賃貸借契約書)で締結することに加えて、借主に十分な情報を提供して意思決定をしてもらうために、貸主は書面により、契約に更新がない旨を説明することが義務づけられている(第38条1項、2項、3項)。
2) 貸主からの6ヶ月前までの通知義務については、期間が1年以上の契約の場合、契約期間満了の1年前から6ヶ月前までに賃借人に通知しなければならない。貸主が通知を忘れて契約期間を過ぎた場合は通知のあった日から6ヶ月後に定期借家契約は終了する(第38条4項)。
3) 賃借人の中途解約については、居住用に限り、200u未満の床面積のものについて、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情がある場合のみ認める。この場合、解約申入れ日から1ヶ月の経過で解約となる。ただし、200u以上の床面積のもの、また事業用は、特約がなければ中途解約できない(第38条5項)。
4) 居住用に限っては、既存契約しているものから、貸主・借主がたとえ合意しても、当分の間定期借家に切り替えることはできない(附則第3条)。

◆2.従来の借家契約の問題点

貸主側の問題
1) 貸したら返ってこない(貸主は、正当事由なくして借家契約の更新拒絶ができない)。
2) 借主に退去してもらうためには高額の立退料を支払う必要があり、不動産賃貸事業の計画上、コストが予測できない。
3) テナントからいつでも解約できるので、不動産賃貸事業の計画上、収益の予測ができない。
4) 合意した賃料が減額されることもあり、収益が予測できない。
5) 契約更新にあたっても賃料改訂がままならず、継続賃料は低く抑制されてしまう。
6) アパート・テナントビル等は、借主の退出時期がバラバラになるため、全室を空室にして行うような大規模修繕等が行えない。

借主側の問題
1) 賃借に際し、高額な礼金敷金が取られる。
2) したがって、気軽に引越しができない。
3) 狭くて貧弱な借家が多い。

◆3.定期借家の活用法と影響

1)遊休地の有効活用
貸主が契約期間を定めることができるため、その間の収益の把握が容易となります。また、期間終了後に大規模修繕を行い、リニューアルして次の契約の家賃を適正な市場価額に設定できるなど、賃貸事業計画が立てやすくなります。従って、居住用だけでなくオフィス等の契約において定期借家契約が増えることが予想されます。

2)相続税の納税対策

相続まで有効活用し、相続発生後に売却・物納する場合でも契約期間を限定できるので、将来相続税を納税するために売却・物納が予定される土地についても、定期借家契約による活用が可能となります。

3)家賃相場が変わる可能性がある
従来の更新可能な借家と確定期限付の定期借家の2つが市場に供給されますので、賃料相場が変わる可能性があります。また、いままで「貸したら返ってこない」と考え、空き家にしたままの住宅が大量に供給され、価格競争が起こる可能性もあります。

4)ニュービジネスの登場
生涯借家を望む人が増え、引っ越しが多くなることが予想されます。それに伴い家具付きの借家が増加したり、また家具のリースサービス等の新しいサービスも生まれるなど、借家人の選択肢が広がります。

5)「現在空室」が、賃貸市場に供給される

「賃貸ビルの一部が空室であるが、2年後に建替え予定なので貸せない」、こんな貸主の悩みは解消されます。たとえば、2年間の定期借家契約による賃貸が可能となります。

6)住宅ミスマッチの解消
例えば、郊外の広い一戸建てに居住している老夫婦が、その自宅を定期借家契約により賃貸し収入を得て、自分たちは都心のマンションに住む、といったライフプランも容易になります。

定期借家は、契約によって、期間や収益に関する予測可能性も高まり、賃貸人の経営意欲も高まりますので、広くて、安い賃貸住宅の供給も大いに期待できます。借手にとっても多様な賃貸住宅の中から、自らのライフステージ、ライフスタイルに見合ったものを選択できることになります。
また、貸主においても、契約期限が来たら契約は終了し、明渡しが可能となりますが、反面、個々の賃貸マンション・アパートが借手の厳しい選択の対象となるため、賃貸住宅経営は厳しい競争の時代に入るでしょう。今までのような地理的条件さえ良ければ、いくらでも借手がつくような時代ではなくなります。
このことは、規制と保護から選択と責任をより重視するものであり、貸主と借主間で一定の良好な緊張関係が形成されることとなりますので、借家市場の活性化につながるものと期待されています。
◆4.定期借家権と普通借家権の比較
  定期借家権 普通借家権
契約の方法 公正証書などの書面による契約に限る。予め、更新が無く期間の満了により終了することを契約書とは別に書面を交付して説明しなければならない。 制限なし
契約の更新 期限到来と事前通知により契約終了し、更新はない。継続する場合は、再契約。 正当事由がない限り、貸主は更新を拒絶することができない。
賃貸借期間 制限なし。1年未満の契約も有効。 1年以上20年以内(2〜3年が多い)
中途解約 契約による。但し、床面積200u未満の居住用については、借家人がやむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった場合には、法律により、1ヶ月前の通知により解約できる。 慣行上、6ヶ月前に通知すれば、違約金なしで中途解約できる。
賃料の改定 賃料の増減は、契約の定めに従う。 継続賃料抑制主義
立退料の存在 なし 正当事由の補完として法が想定
その他 2000年3月1日より前に締結された借家契約は従前どおり普通借家権となる。居住用については、当分の間普通借家権を合意による解除と再契約によって定期借家権に切り替えた場合でも、普通借家権とみなされる。